諸外国の教育事情
中華民国(台湾)
深谷 昌志
1
1教育大学大学院
pp.40
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904345
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今年の国連総会でも,中華民国の正統性が確認されたとのニュースが伝えられている。二つの中国の存在—これは,二つのドイツ朝鮮などと並んで,現代史の悲劇であろう。二つの中国の一方,中華人民共和国(中共)の教育事情については,Vol. 3 No. 11でふれたが,今月は,二つの中国のもう一方,中華民国(台湾)の教育事情を紹介してみよう。
小学校は6年制。現在96%の就学率を誇っている。教科は,国語,算数,社会,理科,音楽など,日本のそれとほとんど変っていない。しかし,教材の中に,孫文の三民主義(民族主義,民権主義,民生主義の三民を中核とする思想)が広く浸透しているのが特徴である。とくに,社会科関係の教材では,帝国主義を排斥し,独裁主義を非難し,共産主義を排除する三民主義の原理が,くり返し,強調されている。国際情勢を反映して,民生主義に立脚した反共抗ソが前面に押し出されるのは当然で,例えば,6年の歴史科の大半は,共産主義が基本的人権と身体の自由を犯していることや,家庭を破壊し,文化を害するなどの事例を満載している。また,5年には,「失われた大陸」の単元があり,中国大陸の紹介を行なうとともに,あわせて,大陸はわが国(中華人民共和国ではない)のものとの説明が加えられている。その他,教科のなかに,公民訓練や課外集団活動という訓練の時聞が特設され,これに週4時間も費しているのが注目をひく。
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