病院側から教務へ
人間味豊かで誠実さのある人を/健康で明るく親切に
古賀 ヒデ
1
,
志賀 とよ
2
1島根県中央病院
2国立千葉病院
pp.7-8
発行日 1961年1月1日
Published Date 1961/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903966
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いつの世でも,人々に切実に望まれ,期待されて,日進月歩する医学に平行して,看護学の研究と看護婦の教育が要請されるのは,必然的の現象でありましょう。その看護婦生活の予科の過程にある看護学生に如何なる人材を,とのテーマに対して一言で答えれば,人間味豊かで誠実さのある人を,と言えましょう。永年,この道を経て描いた私の理想像を述べてみたいと思います。
その人は,内向性の性格の持ち主であるにもかかわらず,何かに没頭すると執着心と積極性を発揮する。看護実習においても彼女特有の徹底した看護計画のもとに行動し,ときおり,マスターしきれぬほどの計画過剰も見られるが,そのような理想も学生の特権として認めたい。それゆえに,彼女のゆき届いた思いやりは,患者の信頼の的であるが,また一方実験用動物に対する愛着には,彼女の胸にある温かい母性を感じて微笑ましい。そして内面生活として,文学ことに詩歌などの感情文学にうちこみ,それと相通じて,音楽,美術にも大いに関心をよせている。そういうところに彼女の情念の調和がはかられ,美しいことと,醜いことを看破する鋭敏な感覚が養われている。また総明な頭脳は,数学的にすぐれ,何事にも合理性が折りこまれ,近代人の常識としての語学を修得し,諸種の書物にも通じているが,女性の天性を殺すような議論は求めず,吸収された知識が芳香を発散するかのような雰囲気をかもし出している。
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