視座
医師としての人間味
内藤 正俊
1
1福岡大学医学部整形外科学教室
pp.593
発行日 2000年5月25日
Published Date 2000/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902984
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昨年11月,幼稚園入試に端を発した幼児殺害事件が報道された.この痛ましい事件を,受験戦争も極まれりと多くの人が感じたと思う.“お受験戦争”に関連して医師の立場から,感じたことを述べてみたい.
私は昭和45年に大学に進学し,医師となって22年経過した.振り返ってみると,大量の情報の消化・吸収,手術手技の修練,診療と症例の記録・整理・成績評価・締め切りなどに追い回されてきた日々である.医師になるには一定以上の受験戦争を乗り越える能力がないととても務まらない職業であることを実感している.しかし,私の時も医学部入学は難関ではあったが,今ではこの難関突破のため知育偏重の教育があまりに幼い子供時代に始まり,学業成績,偏差値が過大評価され過ぎていると感じている.多感であるべき時代が失われ,“お受験”のために社会性や人間性など大切なものが犠牲にされてきているのが現状であると思う.
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