特集 患者・家族からの発言
子供本位の人間味豊かな病院があれば……—小児がんで愛児を失った父母からの聞き書き
小板橋 稔
,
市良 和子
,
伊藤 淑子
1
1東京都立府中病院医療相談室
pp.1052-1059
発行日 1979年10月1日
Published Date 1979/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918791
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──T君は,昭和48年2月,細網肉腫と診断された.小学校入学の直前のことである.T君は3人姉弟の真ん中で,発病の1年ほど前から精神的にもめっきり成長をみせ,両親の期待を集め出していたころの発病だった.T君の両親は高校の教師である.
T君が,私がMSWとして勤務していた病院に入院したのは,昭和49年1月である.入院した日から,50年4月に亡くなるまでの間,お父さんは更にしばしば医療相談室を訪れている.新米のケースワーカーだった私は,何ひとつ解決できず,援助らしい援助もできないままお父さんの話に耳を傾けていた.お父さんの抑制された表現の中に,T君への強い愛情が感じられたのが印象的であった.
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