連載 病原微生物・見方をかえたら・11
インフルエンザウイルス
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.158
発行日 1997年2月25日
Published Date 1997/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903792
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インフルエンザウイルスは最もよく名前を聞くウイルスの1つです.多くのヒトが流行期には感染してしまいます.このウイルスによる感染症は歴史上名高いスペイン風邪のようなものを除いては比較的軽く回復するわけですが,これは人類にとっては幸運な偶然と言えるかも知れません.人畜共通感染症のあるものは,ペストのように非常に死亡率の高い感染症を起こすことがよく知られているからです.このペストの場合にも,ヒトの間に大流行を起こすものは肺ペストといって典型的な呼吸器伝染病としてのものです.消化器伝染病も同じですが,ヒトが生きていくうえに続けていかなければならない生理的活動としての2大活動が,伝染病の大流行と関係があることは当然のことと言えるでしょう.このウイルスの本来の宿主はトリやブタと言われています.インフルエンザウイルスはトリにおいては腸管の粘膜細胞で増殖し,このことでトリは健康を失うこともないそうです.あるウイルスが宿主のどのような細胞に感染できるかについては,膨大な研究があります.しかしインフルエンザウイルスが宿主の種がかわると消化器感染症から呼吸器感染症を起こすようになるということは,やはり感染環の成立という観点からも考えてみるべきでしょう.
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