連載 病原微生物・見方をかえたら・1【新連載】
はじめに
益田 昭吾
1
1東京慈恵会医科大学
pp.329
発行日 1996年4月25日
Published Date 1996/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903754
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- 文献概要
将来,看護業務に携わろうとしている若い人たちに病原微生物のはなしを講義する機会がしばしばあります.そしてこの人たちから,病原微生物学は,いろいろな伝染病や感染症を起こすたくさんの病原体がいて,とにかく覚えることが多いので,大切な科目であるということはよくわかるのだが,退屈だという感想をよく聞きます.この感想にはわたしも同意できます.わたしも学生時代に同じようなことを考えたからです.
しかし,その後,感染症を研究してみますと,少し考え方が変わってきました.どうして感染症の話が興味あるものにならないかと考えると,いくつかの理由に気がつきます.その中で最も大きいものの1つは,病原体を,病気を起こすいやな奴,憎い奴だから,この世の中から消えてしまえばよいと考えていると,病原体のことをよく知ろうという気持ちは起こりにくくなることがあると思います.これは,大切な人や好きな人のことは詳しく知ろうとしても嫌いな人のことは最小限のことしか知ろうとはしないのと一緒です.
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