特集 問いなおす看護教育
創造性を高める教育―2人の科学者からの学びを通して
川島 みどり
1
1健和会臨床看護学研究所
pp.434-439
発行日 2001年6月25日
Published Date 2001/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902513
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
独創的なアイディアを生む土壌
「その時味わったのは,議論の過程で2人とも全く考えていなかった新しいアイディアが湧いてくる体験だった.独創的なアイディアは孤独からは生まれない.ディスカッションの場から生まれる.私が体得した研究哲学の1つである」1).これは岸本忠三氏(大阪大学学長)の言葉である.アメリカで先端免疫研究に没頭された頃,石坂公成博士との議論を重ねるプロセスが,「とっておきの恵みの時間」であったと言われる.
筆者はこの一文に接したとき,“そうなのだ”と深い共感を覚えた.学問上のことや社会現象に対する,きわめてクリティカルな精神を土壌とした討論の大切さ,権威に屈しない学間する態度を私に真摯に教えてくれたのは2人の師―武谷三男と井尻正二である.その2人からの学びの根底に通じるものがこの言葉にあったからであった.詳細は後述するとして,なぜ,そのことを,いま看護教育者らに伝えたいかということをまず最初に述べておこう.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.