連載 論より生活・6
「生活」と「くらし」
頼富 淳子
1
1(財)杉並区さんあい公社
pp.476-477
発行日 2000年6月25日
Published Date 2000/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902277
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私が保健所保健婦から住民参加型福祉公社に転勤してきたのは1992年のことである.仕事は公衆衛生看護から,住民による高齢者ケアのサポートとホームヘルプサービスのコーディネイトへと大きく転換した.同時に,保健婦集団の中で群れていた時分には感じたこともなかった自分の認識の甘さ,浅さを介護畑に1人置かれて初めて思い知らされることになった.
公社に来て間もなくのことだった.私は難病の方の介護を区民の有償ボランティアである協力員にお願いした.無事に利用者との顔合わせも終わり,活動は順調にスタートした.しかし,新米コーディネーターがほっとしたのはつかの間のこと,私は協力員に利用者の病名を伝えることも,病気の説明をすることもすっかり忘れていたのだった.恐縮して協力員に詫びると,電話の向こうの彼女はこう言った.「病名は教えてくれてもくれなくてもどちらでもいいと思うんです.教えてほしいのは,その人が何ができ,何ができなくて,何を手伝ってほしいのかということです.もし利用者が自分の病気を私に知っておいてもらった方がいいと思ったら,おいおいに自分から教えてくれるでしょうから」
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