教養講座
くらしと花—1
北条 明直
pp.37-41
発行日 1956年3月15日
Published Date 1956/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910083
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はじめに
最初,私はいけばなの鑑賞について書くつもりでした。ところが,今日のいけばなを知ろうとする場合,いつも私の頭に去来するのが,いけばなとは何か,という命題に答えることでした。
戦後のいけばなは,非常な勢いでその様相を変貌しました。恐らくみなさんも,これがいけばなだろうかと首をひねるような,奇妙な異質物(生きた植物でないもの)を使つたいけばなを,デパートや展覽会場のいけばな展で,見かけられることゝ思います。だが一方,昔ながらの格調をもつたいわゆる床の間に似あう,いけばなも,相変らず私達の家庭生活にその座を占めていることも知つています。では,一体,その両者は全く違つたものなのでしようか。違つているとしたら,その違いはどこから来ているのでしようか? 更に私達は疑問を拡げていけばながどうして,日本のユニークな(特異な)芸術として,今日まで伝わり発展したのでしようか? 何故に,お嫁入りの道具といわれるような存在にまでなつたのでしようか? 等々。こうしたいろんな疑問に対して私達はもつと確かな知識を持つていゝと思います。
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