時事を読む
「子ども虐待」の背景
稲垣 由子
1
1甲南女子大学人間関係学科
pp.428-430
発行日 2000年6月25日
Published Date 2000/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663902268
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子どもたちが示す諸問題
筆者は小児科医になって26年が過ぎた.そしてこの4月から女子大学の人間関係学科に転職し,若い女性たちに,子どもの輝きを教え,育児をするようになった時に,少しでも役にたててもらえればという思いで「子ども学」を教える立場になった.しかし,実をいえば以下のような動機が私を一般小児科医から転職させることとなったのである.
大部分の小児科医がそうであるように,私も大学を卒業してから,大学病院,地域の中核病院で一般小児科学の臨床を実践してきた.急性疾患,慢性疾患,育児指導,乳幼児健診と扱うものは幅広く,様々な経験をくりかえすうちに子どものみでなく,子どもが存在している家庭,環境,社会,文化なども考慮にいれながら診療していくようになってきた.そのような経過の中で,どうしても理解できない状況に陥りながら臨床を実践しなければならない場面に直面したとき,「なぜなんだ?」という疑問が湧きつつも解決できずに積み残したまま診療しつづけるという状況があった.
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