特集 児童虐待の防止に向けて
子ども虐待の現状と子ども虐待を巡る動き
鈴木 敦子
1
1大阪大学医学部保健学科
pp.313-317
発行日 2000年5月15日
Published Date 2000/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902291
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英国の伝承童謡集『マザーグース童謡集(Mother Goose's Nursey Rhymes)』に,「大きな枝が折れるとき」という小品がある.
「木の上の赤ちゃん,おやすみ./風が吹くと,ゆりかごゆれるよ./大きな枝がゆれると,ゆりかごゆれるよ/大きな枝が折れると,ゆりかご落ちる/赤ちゃん,ゆりかご,みんな落ちるよ.」というものである.この唄は単なる“子守歌”ではなく,子どもの虐待を意味しているという1).子どもの虐待は関係性の障害ともいえるが,この童謡は社会(大きな枝)と家庭(ゆりかご)と子ども(赤ちゃん)の関係を示している.つまり,何らかの原因(風)が木を揺さぶり,その木を折るとき,当然ながら家庭は影響を受け,それは子どもにも深く刻まれ,双方ともが木から落ちてしまうのである.木々を揺さぶっている風とは,言うまでもなく“貧困”であり,それは有史以来,全世界にずっと吹き荒れてきたものである.かつての子ども虐待が,「貧困社会型子ども虐待」と呼ばれる所以は,貧しさゆえに親たちはわが子を虐待し,社会もそのことを容認してきたことにある.
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