Scramble Zone
医療の中での人を縛るということ―抑制を強いられた1歳8か月の男児との関わりを振り返って
加治 尚子
1
1現:鹿児島県立保健看護学校保健学科
pp.780-786
発行日 1998年10月25日
Published Date 1998/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901924
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はじめに
小児の一般的特徴の1つに「小児はさまざまな環境条件の影響を強く大きく受けやすい」というものがある.1歳児・2歳児は“発達ざかり”と呼ばれるように,発達の高度成長期にあたり,さまざまな側面が急激に発達する時期である.また,発達心理学者が「自立期」と呼んでいるように,自立へ向けての発達がめざましいために扱いの難しい時期でもある.エリクソンをはじめとする多くの発達心理学者たちは「この困難な時期を大人の適切な援助によって,どのようにスムーズに切り抜けられるかが,その子の一生の適応を決定する1)」とも指摘している.
今回私は,真性半陰陽という疾患をもって生まれたために1歳8か月という年齢で4度目の手術を受けることになり,前回の手術の失敗を繰り返さないために術後厳重な抑制を強いられた小児を受け持った.実習期間中,私は,抑制することに対し,創治癒のためには仕方のないことだと考えて接していたが,実習終了後,再度私の行なった看護を振り返ると,抑制が発達ざかりの小児に精神的影響を与えたのではないかと思い,「本当に抑制は必要だったのか」という疑問をもった.
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