連載 公衆衛生学 見方を変えたら・6
史上最強の超猛毒物質ダイオキシン
清水 英佑
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1東京慈恵会医科大学環境保健医学教室
pp.753
発行日 1997年10月25日
Published Date 1997/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901690
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ベトちゃん・ドクちゃんという名前をご記憶の方は多いと思う.先天性の奇形をもってベトナムに生まれ,幼児の時に2人の胴体は外科的に切り離された.その後一人は社会生活が出来るようになったが,もう一人は現在もベッド上の生活を送っている.ベトナム戦争の時アメリカ軍が枯れ葉作戦と称して散布した大量の除草剤の中に含まれていた化学物質が原因であるとされる.この物質はその後,1976年にイタリアのセベソにある農薬工場の爆発の際に大気中に噴出し,工場周辺と風下の地域を広範囲に汚染した.
その名はダイオキシン.正式にはポリ塩化ジベンダイオキシンという有機塩素化合物で,塩素の数により210種類もの類似物質がある.特にTCDDと略されるダイオキシンは,発がん性があり,奇形を発生させるだけでなく,生体の免疫力も落としてしまう史上最強の超猛毒物質である.ベトナムで大量に散布された除草剤中に不純物として含まれていたが,そのため解放後のベトナムで重篤な胎児の奇形が発生した.
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