発言席
ダイオキシン汚染について
加藤 龍夫
1
1横浜国立大学環境科学研究センター
pp.589
発行日 1992年8月10日
Published Date 1992/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900535
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催奇性発癌性猛毒のダイオキシンについて,今あらためて噪々する必要性はないだろう。問題はベトナムの山野にこの世の地獄を現出せしめた人為毒物が,毎日,日本国土に降りそそぎ,東京湾の魚や日本女性の母乳から必ず検出されるという事実である。濃度の多少を云々する向きは本質を理解できない人非人に過ぎない。現に物理破壊,化学汚染によって地球生命が危機に瀕しつつある時,ダイオキシンはその代表例であるから,この問題1つまともに対応できなければ,この国の技術も行政もないに等しい。
では,ダイオキシンの本質は何か。正式には塩素化ダイオキシン混合物で,農薬不純物,パルプ工場廃水,ゴミ焼却場の焼却灰,排ガスとして環境に放出される中で,ゴミによる寄与が重点課題となる。ここでその対策が可能な理由について考察してみよう。日本の汚染は公害から環境問題へと変わってきた。いくつかの特徴があるが,公害は生産活動に伴う廃棄物のたれ流しであった。たれ流した方が儲けが大きかったからである。だから規制を強化し,技術が進歩すれば公害は防止できて,また生産活動には何の支障もきたさなかった。
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