特別寄稿
母乳とダイオキシン
橋本 武夫
1
,
本郷 寛子
1聖マリア病院母子総合医療センター
pp.1050-1054
発行日 1997年12月25日
Published Date 1997/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901842
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はじめに
1993年4月20日,朝日新聞の朝刊第一面のトップに,日本の母親の母乳中に含まれるダイオキシン含量がヨーロッパ諸国の基準に比べ10〜200倍も高いというニュースが報じられた。これを発端に“しのびよる人体汚染”としてのダイオキシンの恐怖がマスコミによって繰り返し叫ばれ,現在なお一般のお母さんをはじめ医療関係者においてもダイオキシンの母乳汚染に対する不安と疑問を抱えている現状である。その結果,母乳育児を放棄する母親さえみられている。
これまでの母乳汚染の報道と類似するが,一般の母親の恐怖心をあおるこの報道は,ちょうど20〜30年前の未熟児網膜症の頃を思い出させる。ある新聞に酸素投与はもちろん「保育器に入ると目がつぶれる…」という大きな見出しで,未熟児網膜症の恐怖が述べられていた。それらを見た家族らは1500gにも満たない赤ちゃんの入院に際し「うちの児を保育器に入れて下さるな……」と嘆願してきたのである。
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