連載 待合室で僕は・7
日本における血友病者のHIV感染を振り返って(1)
大西 赤人
,
大浦 信行
pp.486-487
発行日 1997年7月25日
Published Date 1997/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901639
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血友病とエイズ―HIV感染との関連性について,日本で初めて報じたのは,1982年7月20日付『毎日新聞』と言われている.その40行足らずの記事には,「『免疫性』壊す奇病,米で広がる」との見出しとともに,米紙『ワシントン・ポスト』から引用する形で,同性愛者,麻薬常用者,血友病者などの間に「不思議な病気がジワジワ広がっている」と記され,確認された患者471人,うち死者184人との数字が添えられている.
僕はこの記事は眼にしておらず,同年秋頃になってから,『朝日新聞』に掲載された同様の―多分,もっと簡略だった―記事によって,初めて血友病とエイズとの関わりを知ったという記憶がある.もっとも,血友病者の一員である僕にとっても,恥ずかしながら,事態は文字通り“対岸の火事”に過ぎず,緊追感を抱くまでには至らなかった.翌1983年になると,AIDSという正式な病名が定まり,米国の血友病者の間に発生した患者については,血液(凝固因子)製剤による病原体の伝播が疑われているとの見方が伝えられる.
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