連載 待合室で僕は・1【新連載】
ひとまず早めのブレーキを
大西 赤人
,
大浦 信行
pp.6-7
発行日 1997年1月25日
Published Date 1997/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901536
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僕は,血友病という先天的な体質を持っているために,赤ん坊の時からこの方,病院との縁は切れたことがない.この数年こそ,あまり嬉しくない意味合いで変に有名になってしまったが,僕が生まれた1955年頃には,血友病なんて,いわば全くマイナーな病気だった.東京の大学病院で確定的に診断されたのは満1歳ぐらいの時と親から聞かされているけれど,それまでに受診した幾つかの病院の中には,「血友病という病気がありますが,それだとまず長生きは出来ないかもしれない」云々と語った医師もいたらしい.
血友病は原則的に遺伝体質だから,それだけでも差別や偏見の対象になりやすい.結果,本人も家族も,他人に対して病名を隠そうとする嫌いがあった.そのため,ますます病気の実態が世間に広まらないという悪循環も生まれた.もっとも,僕の両親は「何か悪い事をして病気になったわけじゃなし,堂々としていろ」という感じだったから,子供の頃の僕は,結構誰にでも,自分の体質についてベラベラしゃべっていた.
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