連載 実践の場で生かす関係法規―看護者の主体的な行動のために・3
末期医療における看護の役割
嵯峨 清喜
pp.400-404
発行日 1996年5月25日
Published Date 1996/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901380
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主治医Aは,多発性骨髄腫(1990年診断)で入院治療中の患者(58歳)の妻と息子から,「患者が既に末期状態で意識がなく,死が迫っており,呼吸不全のため耐え難い苦しそうな状態から解放してやりたい,すぐに息を引き取らせてほしい」と強く要請された.そこで,看護婦Bに対しフォーリーカテーテルおよびエアウェイを除去し,一過性心停止等の副作用のある不整脈治療剤ワソラン(商品名)を通常使用量の2倍分静脈注射するように指示し,Bは静脈注射した.しかし患者の脈拍等に変化がみられなかったことから,続いて希釈しないで使用すれば心停止を引き起こす作用のあるKCL(商品名)を希釈することなく静脈注射するようBに指示した.BはAからの各指示につき不審を感じたが,「まあしょうがない」と思いそのまま指示に従った.間もなく患者は急性高カリウム血症に基づく心停止により死亡した(1991年4月13日).このケースでAは殺人罪で起訴され,有罪判決となった.
この場合,看護婦Bに何等かの刑事責任・民事責任または倫理的責任があるか,また免許取消等の行政責任はあるか.
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