特別講義
看護教育への期待―プライマリ・ケアの理念に基づく看護職者の養成を
平野 寛
1
1川崎医科大学内科学
pp.876-881
発行日 1993年11月25日
Published Date 1993/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900703
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はじめに
筆者が1955年に医学校を卒業し,1年間のインターンを経て内科医の道を歩み始めてから,今年ですでに37年余を経過した.その間の医学・医療の進歩は目覚ましく,筆者の専門とする肝臓病学の領域においても,今日では最も一般的な肝機能検査項目の1つとして日常的に頻用される血清GPT値の測定でさえ,いまだ臨床に導入されていなかった往時を顧み,死の判定と関連して肝移植の問題が盛んに論議されている現状を考えるとき,まさに今昔の感が深い.医学の進歩は今や生命自体をさえ操作しようと思えば可能な時代となったし,ヒトの全遺伝子の染色体上の位置を決定できるのもそれ程遠い将来ではないといわれている.
医科大学に身を置く医師の当然の責務として,前述のような医学・医療の進歩を踏まえながら診療や研究に従事するとともに,専門領域を中心に医師の卒前ならびに卒後の教育に参与してきた筆者は,1980年以降の約8年間にわたって,わが国で最初のプライマリ・ケア(以下,プライマリ・ヘルス・ケアと同義に用いる)担当部門である総合臨床医学教室の開設とその後の管理・運営に携わった.2教室を主宰することは決して容易な業ではなかったが,それらの日々にめぐりあえた多くの先達たちの教えから,医学・医療に対する考え方に強い刺激を与えられるとともに,看護職の重要性と今後の発展の必要性とを痛感させられた.
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