特集 生命倫理と看護教育
今なぜ看護と生命倫理か
櫻庭 繁
1
1千葉大学看護学部
pp.516-521
発行日 1990年9月25日
Published Date 1990/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900087
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生命倫理とは?
今日,医療は従来の自然科学を基盤にした医療側の独断的選択では評価しきれない,多くの問題を包括するようになってきた.特に情報社会の中で,医療は国民の共有のものとしての評価が行なわれ,その複雑交差した社会の中にあって,多様な意見とそのコンセンサスをとりながら展開していくことが求められている.一方,医療自らも他領域の研究成果とその英知を求めなければならない状況に変化してきている.それが,最先端の医療の場に行くほど著明になってきていることは,多くの人の知るところである.
ここでのテーマである「生命倫理」も脳死や臓器移植,治療,研究上の倫理的問題だけでなく幅広いテーマで医師,看護婦,法曹界,政界,宗教界などを含めた社会全体の中で議論されていることはご承知のことと思う.そこには人間の生命という,人間の根元にかかわることに序列をつけたり,生命を絶つという医療行為をする場合,医療を行なう者だけの判断ではむずかしい課題とジレンマを含んでいるからである.いかにしたらそこでの行動,判断に倫理的規範を持ち,その客観性,中立性を保ちながら生命に対する尊厳を厳守したケアとキュアができるかが大きな,しかも重要な課題になっている.しかし,実状は,患者1人1人に対する判断のための条件,手続きといったことが重視されている.
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