特集 教育の前提を問い、変わっていくために 教育機関の組織改革
「領域をこえる」とは―新カリキュラムにおける領域横断型実習の設計における多領域での協働
坂井 志織
1
1淑徳大学看護栄養学部・成人看護学
pp.46-50
発行日 2024年2月25日
Published Date 2024/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202201
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はじめに
みなさんは領域(もしくは講座)と聞いてどのようなことをイメージされますか。まずは専門分野による区分けが思い浮かび、次いで、有形無形の垣根をイメージされるのではないでしょうか。文化人類学者の中根1)が、日本社会の構造は、タテのつながりから成る小集団が組織を構成する「タテ社会」であると言います。この「タテ社会」を成す小集団は封鎖的1)であり、内の結束が強くなる一方で、外の集団は排除するという傾向も指摘されています。この小集団の構造は、看護学の領域にも当てはまり、他領域とのつながりを希薄にしている側面があります。領域が封鎖的である組織では領域横断科目が成立しづらく、実現したとしても、多領域の連携ではなく分業になってしまうという声も少なからず耳にします。
領域の枠が強く意識されるなかでは、「領域を越える」と聞くと、その主体は個人であるかのように無自覚にとらえてしまいます。しかし、よくよく考えてみると、ある個人が領域を「越えた」としても、1人だけが外に出たことになり、それでは孤立になってしまいます。しかし、私が本学で経験したのは、“ともに「越える」ことで領域を「超えた」成果が実現する”という多層的な「こえる」でした。以下では、「越える」を領域や職位などの枠組みを乗り越えること、「超える」は既存のものを超え新しいもの生み出すこと、「こえる」はその複合性を意図し使い分け、多領域で実習科目をつくる協働実践のプロセスについて提示しながら、「こえる」についても深めていきたいと思います。
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