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はじめに
超高齢社会は加速度的に進んでいる。内閣府による『平成29年版高齢社会白書』11)によるとわが国の高齢化率は27.3%にまで増加しており,2065年には国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると推定されている。WHOが採用した障害調整生命年(disability-adjusted life year:DALY)は障害の程度や障害を有する期間を加味することによって調整した生存年数である。DALYの視標としての評価は検討の余地があるが,2009年に公表された資料21)によれば,2004年の本邦におけるDALYの疾患別割合は第1位がうつ病,2位が脳血管障害と報告されている。厚生労働省による患者調査ではうつ病などの気分障害を中心とする精神疾患の患者数は年々増加傾向にあり,4大疾患と言われたがん(悪性新生物),脳血管障害,虚血性心疾患,糖尿病の患者数を上回り,広く国民にかかわる疾患と考えられ,2013年度から新たに精神疾患を加えた5疾病5事業が開始されたことはよく知られるところである。
厚生労働省の『平成28年国民生活基礎調査の概況』7)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf)によると要介護者では認知症が24.8%と最も多く,脳血管疾患(脳卒中)が18.4%となっており,脳血管障害やその後に発症するうつ病や認知症に対する介入が急務である。2018年からは医療計画と介護計画の両者が一体となった地域包括ケアシステムの構築が本格化する。総合病院精神科における身体合併症医療は1990年代から検討が進み,実際に徐々に院内他科や精神科病院との協働は進んでいるように思われる。しかしながら身体疾患に伴う精神症状(特に不安や抑うつ)については,総合病院において急性期の治療を受けている間に新たに出現した場合,典型的な興奮を伴うせん妄よりも過小評価されがちで,精神科コンサルテーションリエゾンにも取り上げられることが少ないように思われる。そのため不安や抑うつといった身体疾患の予後にも影響を及ぼす重大な精神症状の客観的情報が欠落したまま,いつの間にかリハビリテーションあるいは療養目的のために転医してしまうケースが少なくない。
本稿では脳卒中後に高頻度で出現するうつ病について,我々がこれまで取り組んできた協働の経緯とその成果,今後の課題について概説する。
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