Japanese
English
特集 医療・医学の課題としての身体合併症
糖尿病領域との協働
Collaborative Approach for Diabetes Mellitus
橋本 塁
1
,
野田 隆政
2,3,4
Hashimoto Rui
1
,
Noda Takamasa
2,3,4
1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神医療政策研究部
2国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院精神科
3国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター臨床脳画像研究部臨床光画像研究室
4国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神薬理研究部
1Department of Mental Health Policy and Evaluation, National Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry, Tokyo, Japan
2Department of Psychiatry, National Center of Neurology and Psychiatry Hospital
3Clinical Optic Imaging Section, Department of Clinical Neuroimaging, Integrative Brain Imaging Center, National Center of Neurology and Psychiatry
4Department of Neuropsychopharmacology, National Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry
キーワード:
Diabetes mellitus
,
Collaborative care
,
Shared care
,
Consultation-liaison
Keyword:
Diabetes mellitus
,
Collaborative care
,
Shared care
,
Consultation-liaison
pp.639-646
発行日 2018年6月15日
Published Date 2018/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205617
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精神科領域における糖尿病治療の重要性
糖尿病は,統合失調症患者のおよそ13%26),大うつ病性障害患者のおよそ9%25)が併発するなど,精神疾患との併存率が高い,精神科治療の場においてもしばしば遭遇する疾患の1つである。糖尿病治療薬の使用によって抑うつ症状や認知機能の改善が認められるなど15),糖尿病の病態が精神症状にも影響を及ぼし得ることが明らかとなっている。このことから,糖尿病は精神科医療においても無視することのできない疾患であり,患者が糖尿病を併発している場合には,糖尿病の適切なマネジメントが求められる。
ただし,糖尿病と精神疾患を併発する患者においては,精神症状が改善されるだけでは,必ずしも良好な血糖コントロールがもたらされるわけではない。抑うつを例にとると,薬物療法や精神療法によって糖尿病患者の抑うつが改善されたとしても,血糖コントロールの著明な改善には至らないこと4),また治療によって抑うつ症状と血糖の双方が改善されたとしても,それら2つの改善は相互に関連しないこと3)が示されている。すなわち,精神科医療の場において糖尿病のマネジメントを考える上では,「精神症状の改善を図ることで血糖コントロールが改善することを期待する」だけでは不十分であり,糖尿病に対する直接的な介入を行うことが求められる。
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