連載 臨床現場で本当に必要な薬のおはなし 教員も学生も知っておきたい「看護薬理」・5
便秘と薬
大井 一弥
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1鈴鹿医療科学大学薬学部 臨床薬理学研究室
pp.642-647
発行日 2023年10月25日
Published Date 2023/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202163
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便秘とは
便秘は特殊な症状ではなく、ごく一般的なもので誰しも発症する可能性があります。起床後、飲水や食事後に排便がスムースであれば、快適な1日をスタートすることができます。しかし、便意をもよおしているのに排便が困難であったり、硬い便などで残便感が生じたりすると、いわゆる「お通じが悪い」ということになり、精神的な苦痛を強いられてしまいます。排便時にはいきみを生じますが、便の性状が硬いといきみにさらに力が入り、その回数が多くなれば血圧上昇にもつながっていきます。現に、冬の寒い時期に強いいきみによって脳出血などが生じてしまう症例報告も散見されます。
日本人は、約5人に1人が慢性的な便秘で悩んでいると言われています。便秘に対して何の対策を講じることなく放置しておくと、頑固な症状から脱することが困難となり、特に高齢者では、浣腸を通り越して摘便も余儀なくされます。便秘は身近にある症候の1つであるため、まさか自分が救急で外来受診までに進展してしまうことを想像できない患者さんや生活者も多いと思われます。
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