視座
臨床研究者としての重要な視点
芝 啓一郎
1
1労働福祉事業団総合せき損センター整形外科
pp.241
発行日 2001年3月25日
Published Date 2001/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903219
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我が国での先駆的な大変優れた基礎,臨床の業績が何故か日本の教科書に文献すら記載がないことがあるのはどうしても理解できない.先輩,教室,あるいは国内の論文,なかでも臨床研究が大切にされているだろうか.われわれは,日本の先人達による数多くの素晴らしい独創的な業績を把握し,それを後輩に伝える使命がある.しかし,日本の論文ではそれらの業績の紹介が抜け落ちていることが少なくなく,引用は海外論文で氾濫している.文献に記さないどころか,意外に我が国の先輩の論文を知らないのではないか.
医療は医学を核とし肉付けされ血の通うものとなり,この得体の知れないものに探りを入れるところに臨床研究の面白さがある.われわれが本当に知りたいのは治療後の患者のQOLであるが,これを科学的に検証する確かな手法を持たない.臨床医の専門的判断は,論文にすることはできない様々な経験や技術によって磨き上げられる.諸外国とは患者の生活環境や習慣,体質や体型のみならず,保険制度も異なるため,我が国の臨床研究には海外では評価され難い一側面もあろうが,国外の論文では味わえない臨場感と言おうか,親近感さえ覚える.それが真に患者に役立つものであれば追試し,その研究を紹介しながら考察し,少し前進した論文にまとめることが臨床研究者の一つの任務である.
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