特集 災害看護教育の現在 東日本大震災から10年を経て
石巻赤十字看護専門学校の災害看護教育―教育内容の変化と展望
安倍 藤子
1
1石巻赤十字看護専門学校
pp.221-227
発行日 2021年3月25日
Published Date 2021/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201683
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
2011(平成23)年の東日本大震災から10年が経過します。
被災当時、私は石巻赤十字病院(以下、設置病院)の教育師長として、新人看護師教育などに携わっていました。一方、北上川河口から数百メートルのところにあった石巻赤十字看護専門学校(以下、本校)は津波で壊滅状態となっていました。その再建のため、私は2012(平成24)年3月に本校に異動することとなり、4月から教務主任を務め、2017(平成29)年4月から副学校長となり現在に至ります。本校が東日本大震災を経験してから3人目の副学校長です。
私は震災直後の医療現場と復興をめざす教育現場の両方を経験した少し特殊な立場にあります。この間、教職員の震災体験談を直に耳にし、また設置病院内外の看護師等の被災体験を聞く機会を設け、体験からの学びと課題を今後の学校運営にどう生かし、後世にも伝えていくかという命題に取り組んできました。被災した学校として、明日にも再来するかもしれない災害に対応できる学校を早くつくらねばと焦るあまり、私とは決定的に違う体験をもつ教職員の気持ちに寄り添えない失敗もしました。災害看護としての従来の考え方では、災害に立ち向かえない現実も思い知らされました。
凄惨な現場で傷ついたこころは、時間が経てば癒えるものでもありません。この10年の節目に、そのような気持ちに対峙しながら、震災経験を生かし、同規模あるいはそれ以上の災害に備えることをめざした本校の災害看護教育を振り返ってみたいと思います。
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.