連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・11
手根管─まるで石造りのトンネル
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.943
発行日 2018年11月25日
Published Date 2018/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201112
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手首には1センチほどの大きさの手根骨が8個あって,それらが関節でしっかりと組み合ってひとかたまりの手根部をつくっています。その手前4個と奥4個の間だけは連結が柔軟になっていて,それが「おいでおいで」ができる広い手首運動を担っています。手根部の掌側は前腕から指へと向かう腱が10本も通過します。それだけの腱の束があるにもかかわらず,手の付け根で腱が浮いて見えることはありません。これは,8個の手根部がU字溝のような形をしていて,腱の束がその溝を通っているからです。この溝が屈筋支帯という靱帯で閉じられるので,腱が浮き出ないのです。この手根骨と靱帯でできたトンネルを手根管といいます。
手根部は手首の部分だけにある小さな部位です。造形するときには大きくなりがちなので気をつけます。前腕の橈骨側にU字溝をつくり,そこから手のひらの骨である中手骨が伸び出ていきます。溝の中に屈筋腱の束を通したら,上にシート状にした粘土で蓋をします。このシート状の蓋から,手のひらの両端を厚くしている筋が,親指と小指へそれぞれ伸びていきます。
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