- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
認知症高齢者を身体拘束から解放するための動き
身体疾患の治療目的などで入院が必要となった認知症・認知機能低下をともなう高齢者(以下:認知症者)にとって,病院という生活環境への適応にはしばしば困難を伴う。「ベッドから降りる時にはナースコールで呼んでください」などの説明を一定期間記憶することが困難である認知症者にとっては,それらを守ること自体が困難である。その結果「理解度が低い人」と扱われ,これらに対応するすべのない病棟では「安全確保」の目的のもと,身体拘束を選択しやすいのではないだろうか。
人の自由や尊厳を奪う身体拘束から高齢者や認知症者を解放する動きは,1998年の「抑制廃止福岡宣言」1)にはじまり,2000年の厚生労働省令「身体拘束禁止規定」2),2001年「身体拘束ゼロ作戦推進会議」3)の発足を経て,2004年には行動指針4)がすでにまとめられている。最近の国からのインセンティヴでは,2016年度診療報酬改定による認知症者へのチームによるケア体制加算「認知症ケア加算1・2」の創設により,入院した認知症者の身体拘束からの解放がある。この加算の目的は「認知症による行動・心理症状や意思疎通の困難さが見られ,身体疾患の治療への影響が見込まれる患者に対し,病棟の看護師などや専門知識を有した多職種が適切に対応することで,認知症症状の悪化を予防し,身体疾患の治療を円滑に受けられること」5)であるが,認知症者を中心としたケアチームの体制を構築し,身体拘束しない看護計画をチームで策定し,看護師がそれを牽引することへの加算である。この算定には,身体拘束を行った日は100分の60に減算する規定が盛り込まれており,身体拘束が診療報酬評価に直接的に影響する仕組みとなっている。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.