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はじめに
医療の発展とともに,20世紀から21世紀にかけて医療安全への意識が高まっている1)。米国でも,少子高齢化,疾病構造の変化,科学テクノロジーの急激な発達などに伴い,人々の生活やニーズにも大きな変化がもたらされ,医療システムは複雑さを増している。また,医療コストは高騰し,医療専門職者が不足する一方で,医療専門職の教育機関では,社会や医療システムの変化に対応した変革がなされてこなかった2)。こうした状況のもとで,過去十数年の間,医療過誤による事故や,医療サービスの質の低下に対するクレイムが著しく増加している。この現象について,米国医学研究所(IOM : Institute of Medicine)は,数年にわたる広範な調査を行い,医療過誤を削減し,医療サービスの質を向上するためには,「従来の医療ミス」に対する捉え方や対処とは異なった,視点と対策の劇的な変換が必要であり3),根本的な医療専門職教育の改革が必要であると訴えた4)。
このIOMの訴えに応えて,米国の看護教育の有志によるグループがQuality and Safety Education for Nurses(QSEN)プロジェクトを2005年に発足させた5)。米国看護大学協議会(AACN : American Association for Colleges of Nursing)とロバート・ウッド・ジョンソン公益財団(RWJF : Robert Wood Johnson Foundation)は,このプロジェクトを全面的に支援し,全国の看護系大学および,他の基礎看護教育機関の教育者を対象に質の向上と安全教育改革の普及を推進している5)。本稿では,米国の看護教育機関における看護の質と安全教育の改革“QSEN”の取り組みについて紹介する6)。
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