特別記事
教材としてのシミュレータを活かすには授業設計(教授設計)を見直すことから始めよう
織井 優貴子
1
1青森県立保健大学大学院健康科学研究科
pp.512-520
発行日 2014年6月25日
Published Date 2014/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102727
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看護師等教育カリキュラムの改正とシミュレータ導入の混乱
2009(平成21)年度に看護師等の教育カリキュラムが改正された。「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書(以下,検討会報告書)」(2007(平成19)年4月,厚生労働省)では,教育方法の留意点として「フィジカルアセスメント技能の向上のためにさまざまな症状や徴候を再現するシミュレータ等の有効な活用……」と示され,卒業時の到達度においても,『学内演習でできるもの』として「モデル人形」の活用が示されていた。しかし,指導要領では,「臨床場面を擬似的に体験できるような用具や環境を整備する事が望ましいこと」に留まり,備えるべき備品としては「静脈採血注射モデル」等であった(表1)。「さまざまな症状や徴候を再現するシミュレータ等」は,コンピュータ制御で操作する高性能シミュレータ等を指しているものと解釈され,看護基礎教育機関においては従来のモデル人形ではなく,何らかの動力をもつ「モデル人形(中性能または高性能)」の導入が検討された。
また,医学部・歯学部においては,2005(平成17)年より全国統一の共用試験Objective Structured Clinical Examination(OSCE,客観的臨床能力試験)を課したうえでの臨地実習の開始がスタートしており,その教育方法のシミュレーションによる医学教育を行っている。シミュレーション教育の拠点となる実習室としてスキルスラボ(臨床技能実習室),あるいはシミュレーションセンターのような実習室が設置され,シミュレーション教育教材としてのシミュレータ,タスクトレーナーなどが揃えられている1)。
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