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はじめに
1997(平成19)年3月に公布された『医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム指針─医療安全管理者の質の向上のために』(厚生労働省医療安全対策検討会議 医療安全管理者の質の向上に関する検討作業部会)1)のなかに,医療安全管理者の業務の一つでもある「医療安全に関する職員への教育・研修の実施」に関する記載がある。その詳細として,(1)研修は,内容に応じて職員の参加型研修となるよう企画する,(2)研修は,具体的な事例を用いて対策を検討するような企画を行う,(3)企画に際しては,現場の職員だけでなく患者・家族,各分野の専門家等の外部の講師を選定するなど,対象および研修の目的に応じたものとする,(4)研修について考慮する事項,(5)研修実施後は,研修担当者とともに,参加者の反応や達成度等について研修の評価を行い,改善を行う,(6)院内巡視や事故報告による情報を基に,各部署・部門における,安全管理に関する指針の遵守の状況や問題点を把握し,事故の発生現場や研修の場での教育に反映させる,などが挙げられている。ここから考えられる医療安全教育におけるキーワードとして,「参加型研修」「具体的な事例の活用」「職種横断的な研修」などが挙げられる。
日本看護協会における『2009年 看護職員実態調査』2)によると,「職場における悩みや不満を感じること(複数回答)」として最も多かったのは,「医療事故を起こさないか不安である(61.6%)」で,「その悩みや不満が原因で離職を考えたことがある」との回答は49.3%,回答者の約半数である。さらに,年齢別で「医療事故を起こさないか不安である」の回答は,「20~24歳(81.1%)」「25~29歳(70.9%)」「30~34歳(65.8%)」「35~39歳(63.0%)」「60歳以上(35.4%)」で第1位であり,「45~49歳(55.0%)」「55~59歳(46.5%)」では,第3位の理由に挙げられている。不安を抱えているのは新人看護職員に限らず,さまざまな年齢層にみられ,さらには離職の原因にもなっていることがわかる。これらの調査結果をふまえると,医療安全教育の充実は,人材確保の視点からも早急に対応が求められる重要な課題と言える。
本稿では,こうした背景も視野に入れつつ,医療機関において新人看護職員を対象として企画・実施する参加型の医療安全研修について一つの提案を行う。
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