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はじめに
2007(平成19)年に「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第84号)が施行され,医療安全体制の確保は,無床診療所や助産所にも義務付けられることとなった。ここには医療の安全に関する事項として,(1)医療に係る安全管理のための指針,(2)医療に係る安全管理のための委員会,(3)医療に係る安全管理のための職員研修,(4)当該病院等における事故報告等の医療に係る安全の確保を目的とした改善のための方策,が挙げられている。
(3)の「医療に係る安全管理のための職員研修」では,「医療に係る安全管理のための基本的考え方及び具体的方策について,当該研修を実施する病院等の従業者に周知徹底を行うことで,個々の従業者の安全に対する意識,安全に業務を遂行するための技能やチームの一員としての意識の向上等を図るためのものであること」と示されている。また,「具体的な事例等を取り上げ,職種横断的に行うものであることが望ましい」との記載もある。これらから考えられる医療安全教育のキーワードとして,「参加型研修」「具体的な事例の活用」「職種横断的な研修」などが挙げられる。
臨床現場では医療安全管理者を中心として,参加型研修の取り組みが実施されており,看護基礎教育における医療安全教育でも具体的事例の活用が検討されていると思われる。しかし,多くの担当者から,思うような成果が得られない,担当者の負担が大きい,発想の限界があるなどの課題があるとも聞いている。こうした状況を鑑み,筆者らがこれまで地域医療振興協会 地域医療安全推進センターで関わってきた実践的医療安全トレーニングを参考に,看護学生や新人看護職員を対象とした医療安全教育・研修の企画例を提案するため,本「焦点」とこれに続く連載を企画した。以前にも本誌で,石川が「看護基礎教育における実践的医療安全トレーニング」を連載したが1),今回は,看護学生および新人看護職員のための医療安全教育の企画について,各稿でそのねらいと目標設定から具体的展開方法と留意点,評価までを含めて,実践可能な企画例を提案したい。
各回の企画例は,数時間程度で1回の教育・研修として実施可能な内容とし,看護学生や新人看護職員が関心をもち,主体的参加を促す“明るく楽しい”医療安全教育を目指す。本稿では,特に,参加者の関心を高めて主体的参加を促す“明るく楽しい”医療安全教育として,臨床経験の少ない看護学生と新人看護職員がゲーム感覚で,楽しみながら学びを深めることのできる3つの教育・研修企画例について述べたい。
なお,本連載では,さまざまな用語の定義を考慮して,「インシデント」を「患者に影響が及ばなかった事例,もしくはタイムリーな介入により事故に至らなかった事例や状況,ヒヤリハットもこれに含む」,「アクシデント」を「患者に何らかの影響が及んだ事例」という意味で使用する。
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