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はじめに
ウズベキスタン共和国(以下,ウズベキスタン)は中央アジアに位置し,1991年に旧ソ連から独立した人口約2670万人の国である。筆者らは2005年から独立行政法人国際協力機構(JICA)の「ウズベキスタン看護教育改善プロジェクト」(以下,JICAプロジェクト)に日本側の専門家の一員として関わり,ウズベキスタンのスタッフで構成された精神看護ワーキンググループ(以下,WG)メンバーとともに,教育カリキュラムに精神看護を導入する役割を担った。JICAプロジェクトの終了後もWGのフォローアップを現在も継続している。
JICAプロジェクトがスタートした当初は,精神看護という科目はなく,これに関連する科目として「医療心理学」という医学中心の科目が定着していた。JICAプロジェクトの大きな目標は,看護教育を「Docter─Oriented Nursing(医師の指示に従った看護)」から「CON : Client─Oriented Nursing(患者中心の看護)」を目指すカリキュラムとし,そのための教育体制を整えることであった。「精神看護学」の重要な概念の一つである「メンタルヘルス」は,WGメンバーにとっては,はじめて耳にすることで,この考え方を理解することは困難を極めた。最初の数年間は議論がかみ合わず不毛の話し合いが続いた。
しかし私たち日本人専門家が定期的にウズベキスタンを訪問してWGメンバーと丁寧に話し合いを続け,また毎月,両国のメンバー参加によるテレビ会議を行うことで両国の精神看護学に関する理解の差を縮めてきた。さらにJICAプロジェクトの一環としてウズベキスタンのWGメンバーの日本研修を実施し,日本の精神病院や作業所などの見学を取り入れたプログラムを設けたことによって,徐々に精神看護学への理解は深まり現在に至っている。(日本赤十字看護学会誌2010,北里看護学会誌2011)。今回,「精神看護」を導入した成果を調査するために現地調査を行ったのでこの結果を報告する。
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