特集 訪問入浴サービスへの思い
スピリチュアルケアからみた訪問入浴サービス
小澤 竹俊
1
1めぐみ在宅クリニック
pp.754-757
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101421
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はじめに
ホスピス・緩和ケアに従事して15年目を迎える。ホスピス病棟の医師としての12年,在宅ホスピス医としての3年である。
クリニックを開業し,在宅医療に専念するようになってから,訪問入浴の果たす役割はきわめて大きいものであることを実感してきた。病院のなかでは,生活は患者から切り離されている。食事も保清もすべてが病院側によって提供されているからである。しかし,一度在宅に戻ると,その状況は一変する。あたりまえのことであるが,日常の買い物から排泄まで,すべて本人・家族が行なわなくてはならない。
とくに終末期においては,今まで歩くことができていた人が,徐々に歩けなくなっていく。
入浴も然りである。今まで一人で入浴できていた人が,さまざまな理由でできなくなる。個人差はあるが,一般的にきれい好きな日本人にとって,入浴できない苦しみは大きなものであるに違いない。
そのような状態になったとき,寝たままでも入ることのできる訪問入浴サービスは,とても魅力的な援助であると思う。利用者さんの「お風呂に入ることができた」という喜びを,援助しながらともに実感できるとき,それは重労働でもあるのだが,関わるスタッフは,誇りをもってこの仕事に従事しているのではないだろうか。
入浴を切望している利用者さんに,在宅で入浴サービスを提供できることは素晴らしい援助である。しかし,訪問入浴によって得られるものはそれだけであろうか? スピリチュアルケアを学んできたホスピス医の立場から,訪問入浴サービスの果たす役割を考えてみたい。
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