第2特集 看護学生論文─入選エッセイ・論文の発表
論文部門
看護師の消極的倫理行動に影響する要因と心境との関連
橋本 あかね
1
1香川県立保健医療大学保健医療学部看護学科4年
pp.694-697
発行日 2012年8月25日
Published Date 2012/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102165
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はじめに
患者各々が十分な満足を感じる看護を提供することは,看護の目的であり理想である。しかし実際の日常業務においては,患者1人対看護師1人の関係と,複数の受け持ち患者対看護師1名の関係とを併せ持ち,いずれも最善の看護を求められる。この両立は非常に難易度が高い。なぜなら個々の患者はすべて平等に看護を受ける権利を有する一方,看護師は時間や投入可能な労働力の制限,看護業務の範疇などを考慮した優先順位の判断が求められるからである。筆者は,看護を提供することが妥当もしくは患者の利益になると判断したにもかかわらず実施しないという結果に至った経験や不全感をもつ看護師がいるかもしれないと考えた。看護師はその使命感や倫理観から患者の不利益となる行動をあえて選択することはない。では,なぜ患者の利益になると判断した看護の提供をあえて回避するという消極的とも言える行動を選択しなければならなかったのか,その要因と心境との関連を明らかにしたいと考えた。消極的倫理行動を選択するに至った経緯を記述的に探ることで,臨床看護に携わる看護師のケア提供を阻害する要因および看護師の心理動態が明らかとなる。また,対象者の選定は各々勤務先を異にすることで特定の労働環境に起因するものを排除した。よって,本稿は患者サービス向上および職域における問題解決の一助となり,職務満足度・患者満足度の向上・改善に寄与できると考える。
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