読者からの手紙
3人のおばあちゃん
伊藤 寿美恵
1
1愛知県刈谷保健所
pp.11
発行日 1967年2月10日
Published Date 1967/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203858
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- 文献概要
・その1
入口の板戸をがたごとと,あけておばあさんみえるかねと声をかける。しばらくすると,「ああいるよ」と返事がある。真暗い3畳の部屋の真中にいつものようにうずくまっている。ガラス障子のガラスが2枚破れていて板が取りつけてあるが,上10センチくらい板がなくそこからちょうど体に風がまともにあたるようになっている,部屋一面に敷いてあるボロが敷ふとんの代用にしてあり,上2枚は縞もめんのよごれたふとんがある。着物は下着から上着(半纏)までボロボロふろも2年以上いや34年に肺結核として届出があって以来,2回〜3回しか入っていないと言っていた。39年夏にたらいで行水でもと思い,準備をしていたら,一人息子の嫁が来て「それはおばあさんに使ってもらっては困る」と言ってさっさと持って行かれ,やむなく雑布バケツで体をふく。それより以前に民生委員さんに相談したら息子ができるだけのことはしているのに何が悪いのだと民生委員の家にどなりこみ,市の福祉事務所に話をもちかけても(孫が市役所に勤務している)どうにもしようが手がつけられなかった。その後に訪問したら,息子の嫁に「あんたね—いらんこというのなら来なくてもいいよおばあさんのことなんにもいわんのなら来てもいいけど」と大なき声でいわれた。
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