連載 本のなる樹・10
おばあちゃんの底力
さくま ゆみこ
pp.928-929
発行日 2009年10月25日
Published Date 2009/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101534
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子どもの本には,子どもと祖父母の交流を描いた作品がたくさんある。親が忙しいときでも,生産活動の第一線から退いているおじいちゃん,おばあちゃんなら,人生の大先輩として知恵を授けたり,ほっとする話し相手になってくれたりできるからだ。今月は,おばあちゃんが出てくる作品を紹介したい。
最初は『あたまをつかった小さなおばあさん』。絵がたくさん入った幼年童話だ。登場するおばあさんは一人暮らしで,おまけに年のせいで頭のねじも少しゆるんでいそう。なにしろ毛布にあいた穴をなくそうとして,はさみで切り取ったり,植え付け用のチューリップと玉ねぎをとっておいても,どっちがどっちだか忘れてしまったりするのだから。でも,このおばあさんは愚痴ったり嘆いたりはしない。困るたびに,ぬれタオルで頭をしばり,人差し指を鼻のわきに当てて目を閉じ,考えるのだ。そして考えついたことを即実行する。
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