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●【新しい教育法】「保護者と看護学生間のコミュニケーションの実践;ロールプレイと学習成果」より
コミュニケーションは日常の生活で当たり前のように行われていますが,自分が思っているように相手に伝わっているのでしょうか。アメリカでは,看護学部の入学選考時,多くの大学で,解剖学や生理学と並び,演説のクラスの成績が重視されます。今回のJNEで,小児看護学の実習での新しい試みとして,患者の親と看護師とのコミュニケーション能力を高める実習方法を紹介しています。コミュニケーションの向上を図るために,実習後のブリーフィングの際に,実際の患者の親と意見や感想を交換する場を設け,また看護師,患者,親との役割を決めたロールプレイを行いました。これらの機会は,生徒たちのコミュニケーション能力の向上と自信につながったと報告されています。また,実際の親の意見として興味深かったのが,看護師たちに求めることとして,親たちが先の見えない状況に不安をもっていることに気づくことや,言葉で発せられる以上のものを読み取り,親たちの気持ちに「共感」することです。これらをみると,看護師に期待されるコミュニケーション能力は高く,言葉にできない微妙なニュアンスを読み取り,患者の親の立場になって物事を考えられる必要があります。このような点は,細やかな心遣いができ,人の気持ちがわかる,日本の看護師たちが特に優れているのではないでしょうか。
最近UCSFで実際に起こった,患者と医療者間でのコミュニケーション不足とされる問題をここで紹介させていただきます。UCSFの腎臓移植の待機名簿に名を連ねる5000人余りのなかにJesusという名の中米出身の男性がいました。彼の名前がリストに載ってから6年。3歳の娘と奥さんと共に,年間350件行われている移植が自分の番になるまで毎晩透析をして待ち続けていました。そして,移植が半年後に迫ったある日,UCSFは彼が不法滞在だと知りました。彼曰く,その直後,UCSFは待機名簿から彼の名前を消去したのです。不法滞在だという理由で移植を拒んだと話題になり,この事件を取り上げたWebサイト上などでは,UCSFの対応に疑問をもった方々の署名が14万に達しました。
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