連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
親になりきれない親
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.932
発行日 1986年10月25日
Published Date 1986/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206989
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最近,10代の妊娠・出産・中絶をめぐるショッキングなニュースが報道され,世間を驚かせた。それは,"16歳の少女が人工妊娠中絶手術を受けて出血多量で死ぬ"というものだった。しかも,1人は4か月間に,もう1人は6か月間に2度めの中絶手術ということだ。こうした事件がマスコミを賑わすたびに,性に目覚める頃の男女の"性に関する無知"や"性教育のあり方"が声高に語られる。この16歳の少女たちの場合でも,最初の中絶手術時に,正しい避妊方法についてどの程度アドバイスがなされたのか,気になるところである。
性をめぐる問題の低年齢化と中絶件数の増加傾向は確実に進んでいるように思われる。そして,社会問題としてクローズアップされる反面で,社会的にはいまだにタブー視され,性の悩みを気楽に相談できる場はあまりにも少ない。このような現状にあって,医療ソーシャルワーカーは,"出産はしたものの親になりきれない未成年者の育児態度"にアプローチする。未成年者といっても,周囲の積極的な関わりと指導および本人の自覚によって,育児への対応は十分に可能だが,母親としての意識については今ひとつ憂慮されるところがある。Y子の事例からその点について考えてみよう。
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