特集 地域看護学と公衆衛生看護学 Part1 看護学生が学ぶ地域看護学再考
看護師と保健師の協働を視野に入れた看護基礎教育を―「保健師」とは何かを改めて考える
村中 峯子
1
1日本看護協会事業開発部
pp.376-382
発行日 2012年5月25日
Published Date 2012/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102074
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看護師の母と保健師の娘
冒頭から,個人的な体験談で恐縮ですが,私が保健師になろうとしたときに,もっとも反対したのは「看護師」をしていた私の母親でした。病院勤務の彼女には,保健師の仕事が見えなかったらしく,同じ看護職にもかかわらず「保健師さんは,薬の名前も知らないのよ」「訪問にいっても,看護師のようなケアはしないんだって。何をしに行くの?」と,なかなかの酷評が長きにわたって継続していました。娘である私に対しても「保健師は早く辞めて,病院勤務に変わりなさいよ。臨床はやりがいがあっていいわよ」と,転職を勧めるようなありさまでした。
ところが,その母親が晩年,とある地方都市の精神科病院で働くようになってからというもの,「保健師評」は確実に変化しました。「患者さんがね,病院を退院しても自分で生活していくには,保健師さんの役割がとっても大切なのよ。退院前に会いに来てくれるし,地域でいろんなところを紹介してくれるし,何かあったら知らせてくれるの」と言い,最後に「保健師さんて,大変だけど,大事な仕事だわね」と口にするようになっていました。それは,彼女が保健師の働き方が見えやすい「精神科」勤務だったことに加えて,その地域の保健師が精神疾患患者の社会への復帰支援等において相応の役割を果たしていた,という2つの要因があるのでしょう。しかし,これとて,本当のところでは単に個別事例を通しての保健師評であって,保健師の役割全体が見えているわけでないことに相違はありません。それでも,酷評にさらされっぱなしだった私としては,少し距離が縮まった感がありました。
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