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はじめに─すべての看護師が行う「地域看護活動」
読者の皆さんは「看護師が行う地域看護活動」と聞いて,何を思い浮かべるでしょうか。
訪問看護師や病院で働く退院調整看護師といった,在宅看護学分野の活動を思い浮かべる方が多くいらっしゃるのではないかと思います。私も,すぐに思い浮かぶのは,こういった活動でした。では「看護師が行う地域看護活動」とは,在宅看護分野の看護師のみが行っていることなのでしょうか。この質問に対する私の考えを述べる前に,簡単に自己紹介をしたいと思います。
私は,都内総合病院の内科病棟,内科外来・内視鏡検査室で勤務した後,退職し,大学院修士課程の地域看護専門看護師養成課程で学びました。看護師として病院勤務をしていた頃には気づけなかったのですが,修士課程で学ぶなかで,実は病院看護師も地域看護活動を行っているのではないかという考えに至りました。例えば,以前勤務していた病院は,地域の公害・大気汚染健康被害者認定を行うための検査を引き受けている病院でした。1~3年に1回の検査の際には,外来で診察を行うため,外来看護師も地域の担当保健師ほどではないものの,療養指導の一部を担っていました。また,そういった療養者は気管支喘息など抱えている疾患の治療で,病院の呼吸器内科自体に通院・入退院している方も多く,病棟の看護師もかかわっていました。
アンダーソンとマクファーレインによって開発されたコミュニティ・アズ・パートナーモデル(図)1)によると,病院は,8つのサブシステムの1つ“保健医療と社会福祉”であり,住民に影響を与える地域の資源の1つです。ということは,そこで働く看護師など病院の保健医療職者も,地域の資源だといえます。
つまり,「看護師が行う地域看護活動」とは,広い意味で捉えればすべての看護師の活動といえるのではないでしょうか。
病院など施設で看護していたとしても,そこには地域の特性が関係しています。例えば,高齢化が進んだ町にある病院と,新しくできた高層マンションが立ち並び多くの若い夫婦が住む町にある病院では,まず病院に通う患者層が異なることが考えられます。そうなると,その病院で出会う疾患にも特徴が出てくるでしょう。現代では,インターネットの普及や病院のランキング本などもあり,患者たち自身が,抱える疾患の治療に成果を出している病院や医者を求めて,全国に行く時代なので,あまり地域の特性というものは関係ないのではないかという意見もあるかもしれません。しかし,抱える疾患を含め“患者その人”を深く理解するためにも,患者が日常生活を送る地域を理解することが必要であると考えます。例えば生活習慣病は,患者その人だけが原因でその疾患になったのではなく,その患者を取り巻く文化や習慣など人的・物理的環境も大きく影響しています。
もちろん,対象である「地域」を意識するまでは地域看護活動とは言い難い部分もありますが,私は病院など施設で働く看護師も,看護している患者の住む地域の文化や利用できる社会資源についてなど地域特性を理解し,地域のなかで施設が担っている役割などを意識しながら看護することは,さらなる看護サービスの充実につながると考えます。
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