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はじめに
看護基礎教育において看護学臨地実習(以下,実習)は,看護実践能力の基本を身につけるために重要な授業である。実習の充実を図るためには看護教員の力だけではなく,臨床の場で指導する実習指導者の力が大きく,実習指導者の指導力は重要である。しかしながら,実習指導者の養成は国によって示されているが,全国的に受講ニーズを満たす講習会の定員とは言えず,臨床の場で学生を指導する看護師の多くは実習指導者講習会を受講できずに学生指導にあたっている現状がある。その結果,実習指導者自身も,看護学生に対して,どのような考えでどのように指導をしていけばよいのか戸惑いながら実習指導にあたり,さまざまな課題を抱えているといわれている。このような状況に対して,看護教員は実習指導者の考え方や思いを聞き,一緒に実習指導について検討しながら,実習を進めなければならないが,忙しい臨床の場では,お互いに実習指導に対する考え方を議論したり,共有したりすることは困難な状況もある。
そこで,筆者らは埼玉県看護学生臨地実習指導者講習会にかかわる機会を得たことを,看護学生実習指導講習会の受講者(以下,講習生)と一緒に実習指導のあり方について考える良い機会であると考えた。講習会での演習を通して,臨床側が感じている実習指導の問題などの実情を聞きながら,実習指導の考え方や実習指導者の姿勢について,講習生と共に検討することで,学生にとってよりよい実習指導につなげたいと考えたのである。
最近の実情として,看護教員養成講習会の開催が全国的に減少し,看護専門学校の専任教員の約3割の先生方が未受講といわれ,実習指導のあり方などに悩んでいることが多いと,実習指導者の方々だけでなく,筆者が担当した看護教員養成講習会未受講者対象の専任教員研修会参加者からも聞くことができた。したがって,今回本稿をきっかけに,看護教員養成講習会を経験されていない先生方にも一緒に,実習指導者の養成のあり方や意義について考えていただければと願っている。
筆者らが本講習会で担当した科目に関して,今回は,実習指導者に期待する指導者の力量に関する学びと,授業を通して講習生が学んだ実習指導者の力量について,次回は,今回紹介した実習指導者の力量に関する学びを,講習生は実習指導案の作成にどのように活かしながら実習指導者としての力量を学び,深めていったのかについて,都合2回にわたり紹介していきたいと考える。
なお,本稿でいう実習指導者とは,看護学生の実習場面において,看護実践を直接指導する,看護教員以外の看護師を指す。
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