連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・6
学生の力と未来を信じて
新納 美美
1
1東京大学大学院医学系研究科
pp.150-153
発行日 2012年2月25日
Published Date 2012/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102007
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よく見るべきか,眼をつぶるべきか
“向こう見ず”と言えば,“若者の代名詞”という感じがします。しかし,学生と接してきたこの10年余り,“向こう見ずな奴だ”と言いたくなるような危なっかしくもエネルギッシュな若者にはお目にかかりませんでした。看護系に“向こう見ず”な人種はいないのでしょうか。それとも,現代にはもはや“向こう見ず”な若者などいなくなってしまったのでしょうか。
あらためて考えてみれば,向こうを見ないで進むなんて怖いことは誰だってしたくないものです。ここ十数年の間にインターネットが普及して,個人の体験談,物事や人の評判,事にあたるときのノウハウなど,大概のことが簡単に調べられるようになりました。このような恵まれた環境にあっても,なお向こうを見ないで世を渡る人は,愚かだと言われても仕方ありません。しかし,先読みも度を越すと良くありません。他人が発した情報で幾通りもの疑似体験を済ませ,現実の一歩が出る前にどんどん墓場が近づいてきてしまいます。“しょせん人間はこんなものか,自分も最後はこうなるんだな”などと悟ってしまっては,前に進む元気がなくってしまうでしょう。
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