連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・130
生命の力をどこまで信じるか
冨田 江里子
1
1バルナバクリニック(フィリピン)
pp.530-531
発行日 2015年6月25日
Published Date 2015/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200233
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なかなか進まないお産
朝,診療所に行くと2人目のお産だというジュリアンがいた。子宮口開大4cmでよい陣痛だ。トラウベで心音を確認し,生まれるのは昼ぐらいかな?とティナと2人で顔を見合わせて,お産が近くなったら呼ぶように伝えて診療に入った。
昼に経過を見た時も同じ。診療を終えた夕方になってもお産にならないのは,さすがに違和感があった。ティナが1時間前に内診した時もまだ子宮口開大は4cmだったという。陣痛は来ているのに進まない。そのうえ,朝から少し熱っぽかったジュリアンの体温が38.1℃まで上昇している。どうしてこんなに進まないのか?と首をかしげていると,ティナが「彼女,前回帝王切開だって」と私の耳元でささやいた。「えー! 前回帝切? それなら,病院に連れて行かないといけないじゃない!」。ジュリアンが私の声に反応しているのがわかる。ジュリアンは病院で反復帝切されるのが嫌で,あえて何も言わなかったのだ。トラウベでの心音聴取はお腹を露出する必要がないために起こった観察不足だった。
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