一つの主張
再教育の普及と徹底をはかろう
秦 恒平
pp.10
発行日 1961年7月1日
Published Date 1961/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202150
- 有料閲覧
- 文献概要
1.助産婦の「場」
今日,実働助産婦数は内輪にみて4万人,そのうち勤務者は1割弱で新制度助産婦は更に少い.年令,教育,就業状況のこの甚しいアンバランスの中で,或る部分は忙しい歯車にまきこまれており,或る部分は乏しい扱い件数に生計すら成り立たぬ苦境に喘いでいる.それは助産婦界全体の質的量的な混迷のすがたでしかない.しかも助産婦の仕事は変つてきた.その変化は,決して年令や教育内容の違いではない.本質的に助産婦業の占める「場」の変化なのである.気質も違えば方法も違い,助産婦という職業からピーンとくる或る何かが変つてきている.予防医学や公衆衛生の大きな歯車の中の小さな歯車の一つと呼ぶのもいいし,母子衛生保健婦と呼ぶのもいいだろう.要するに分娩という場に集中していた視野が,否応なしに妊娠から産褥に至る長い時間的拡がりに対応せざるを得なくなつてしまつたのだ.助産婦はもはやうす暗い家庭の隅つこで必死に助産するだけではすまない.妊娠した婦人だけが助産婦の対象ではない.社会的,心理的な拡がりがそのまま助産婦業の中へ割りこんできている.
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.