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書評 ―『臨床実践のための看護倫理─倫理的意思決定へのアプローチ』―“人間関係のアート”としての看護を6つの行動規範から学ぶ
添田 英津子
1
1慶應義塾大学病院看護医療学部
pp.37
発行日 2011年1月25日
Published Date 2011/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101652
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グラディス・ハステッドは,イタリア人女性であり,ジェームスはその夫君である。このハステッドの倫理的決定モデルは,世界の移植医療の中心地,米国ピッツバーグで生まれた。本書謝辞にあるN.761とN.485は,ハステッド夫妻が教鞭をとったデュケイン大学看護学部大学院のコース番号である。私事で恐縮だが,同大学在学中にこれらのコースを取り,このモデルを学習したことは,帰国後移植コーディネーターとして活動する大きな支えとなっている。
ハステッドが提唱する「合理尊重倫理(Symphonology)」の語源“Symphonia”は,ギリシャ語で合意(Agreement)」であるという。医療現場には,「患者と看護師」や「患者と医師」などの間でそれぞれの合意が存在し,それらの同意が交響曲のように音を作り上げているだと想像していただければわかりやすいであろう。またハステッドは,看護を「人間関係のアートです」と言い,「看護師はひとりよがりな行為や自分のための行為をしてはなりません。正しい行為には,患者の視点の尊重が求められます。自分とは異なる論理的な見解に寛容でなければなりません」と説明している。医療現場で患者・家族・他職種の方と共に美しい交響曲を奏でるために最も大切で基本的な考え方なのであろう。この倫理的決定モデルは,「患者と看護師」の間にある「合意事項」を出発点としており,この合意を満たすためには6項目の生命倫理の行為規範を必要条件として挙げている。看護師は,おのおのの行為規範を患者のコンテキスト(文脈,前後関係,状況や背景)に照らし合わせて倫理的決定をすることができるというものである。
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