書評
『臨床実践のための看護倫理 倫理的意思決定へのアプローチ』
原田 博子
1
1九州大学医学研究院保健学部門
pp.1031
発行日 2010年10月10日
Published Date 2010/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686101881
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認識と状況のコンテキストを織り込んだ倫理的決定
ハステッド倫理的決定モデルを適用
筆者は,長く看護管理者を務めましたが,「倫理」というと正直,苦手意識がありました。それは,臨床で悩んだ経験がずいぶんあるからです。
1986年に私は,新設の脳神経外科病棟で初めて看護師長になりました。あるとき,「患者は脳死状態である」という担当医の説明場面に同席していました。医師から説明があると同時に,ご家族は私に向かって「師長さん,それならば呼吸器を外してもらったほうがいいでしょうか」と言われたのです。私はそのとき,師長という役割の重大さに打ちのめされ,「人の命とは,生きるとは何だろう。患者さんにとってよいこと,ご家族にとっては何がよいことなのか」と自問し続けました。後に,その答えを求めて哲学を学ぶことになりました。さらに,看護部長として,例えば,倫理的ジレンマ事例を各病棟から出してもらうと,そのほとんどが患者の行動制限のことになってしまう,カンファレンスしようにもどのように進めていいのかわからない,たとえ進められたとしても,その決定が正当なのかどうかが誰もわからない……。
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