特集 学びは越境する―異領域の導き手から看護へ
「憧れることに憧れる」技から教えよう
齋藤 孝
1
1明治大学文学部
pp.460-462
発行日 2010年6月25日
Published Date 2010/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101476
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「憧れ」を薦める─教員養成の専門家として
私は普段中学・高校の教員養成をやっているので,授業のやり方を教えるのが専門です。そこでは教育基礎論という授業があり,私は「憧れることに憧れる」ということを教えています。これはつまり,教師は単に生徒に教えるだけではなく,教師自身が教えている内容に憧れをもち,自分自身が学んでいるという意識を持つということです。こうすることで,生徒の学ぶ意欲や構えを引き出せるのです。自分に憧れがないのに伝えようとしても,生徒は意欲が湧きにくく受け身になってしまいます。ですから私は授業が始まる前,今日教える内容(例えばニーチェの思想)について「今自分が世界で一番ニーチェに憧れニーチェが好きである」と気分を盛り上げて授業に臨みます。いわば憧れが瞬間最大風速を記録した時点で教壇に立つようにするのです。こうすることで学生にもニーチェへの憧れが内側から湧き上がってくるのです。これが教師としての資質だと私は思っていますが,これは訓練により定着させワザとすることができます。看護であれば,人に対するケアの精神などを自分で盛り上げ「看護ほど大切なものはこの世にない!」というくらいの気持ちで授業に臨むと,生徒にも「憧れ」を伝えることができます。こうすれば具体的な技術論を語るにしても勢いが違ってきます。
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