書評
―『続・がん医療におけるコミュニケーション・スキル 実践に学ぶ悪い知らせの伝え方』―わかちあうことでインフォームド・コンセントをめざす「SHARE」を
嶋﨑 和代
1
1愛知総合看護福祉専門学校
pp.387
発行日 2010年5月25日
Published Date 2010/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101459
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本書は,前編同様,がん医療のみならず,いずれの医療現場においても求められる普遍的なコミュニケーションのあり方を示したものである。冒頭では,こんな一節が述べられている。「インフォームド・コンセントの和訳『説明と同意』という言葉からは人の心である知・情・意の『情』がすっぽりと抜け落ちている。(中略)本来,患者の感情を理解することもインフォームド・コンセントには含まれているはずである。」すでに医療現場に浸透している「インフォームド・コンセント」が適切になされていないという声をしばしば耳にする。実際,病状と治療方法の説明を受けて,自ら治療方針を自己決定できる患者は少ないという。この背景には,日本人の文化的背景やパターナリズムに影響されて生まれた「おまかせ式医療」の根強い存在が垣間見える。とりわけ,“悪い知らせ”つまりがんという病気がもたらすイメージとその現実は,患者・医療従事者双方ともの希望を失わせ,インフォームド・コンセントの成立をいっそう困難にする。
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