書評
がん医療におけるコミュニケーション・スキル―悪い知らせをどう伝えるか[DVD付]
西條 長宏
1
1国立がんセンター東病院
pp.553
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410102206
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医師が患者とよくコミュニケーションをとり,適切に病状と治療の方向性などを説明し患者の理解と同意を得たうえで,検査や治療を行うことはがん医療の基本である。また,医師と患者のコミュニケーションは人対人のものであり,そこには個人の性格や考え方が反映されることは当然である。患者とのコミュニケーションのなかでも「悪い知らせの伝え方」についてはさまざまな研究がなされており,欧米では確立された理論に基づくトレーニングが行われている。
一方,わが国ではそのような教育や訓練を受けたことのある医師はほとんどなく,約半数が「悪い知らせを伝えている医師に立ち合った」程度の“教育”しか受けていない。すなわち,患者とのコミュニケーションは経験に基づくものという考え方が中心になってきていた。しかし,それではやっていることが正しいか否か誰も自信がもてないとともに,いたずらに患者の不安感をあおったり,逆に過度の希望を抱かせたりしていることも多いと推定される。というのは,医師が自信のない場合は,患者にとって好ましくない情報についての議論を避けたり,根拠のない楽観論をせざるをえないことによる。結果的に医師は疲弊し,ますますストレスを感じる状態に陥ってしまう。
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